かけ算順序固定の根拠は,どこにあるの?

① 学習指導要領

 乗法の意味について理解し、それらが用いられる場合について知ること
 乗法が用いられている場合を式に表したり、式を読み取ったりすること
 

 乗法の意味とはどんなことか?乗法の順番はどうするか?については、記載されていない。

 

② 拘束力のない学習指導要領解説にも

  一つ分の大きさである5を先に書く場合……。一つ分に当たる大きさを先に,倍を表す数を後に表す場合……。とわざわざ場合と書いてあり,逆順は×とは読み取れない。さらに「4×100 mリレー」(一つ分は100m)のように,表す順序を日本と逆にする言語圏があることに留意する。とわざわざ書いてある。

 

③・【盛山文科相に聞く㊤】

「先生は子どもの好奇心伸ばして」2024年1月6日 教育新聞
 そうすると、今まで丁寧にやっていたものを軽くしたり、場合によってはなくしたりすることも必要となる。また、文科省はベースとなるものを学習指導要領としてお示ししているだけだ。実際には学校の先生や教育委員会の判断になる

④・あ〜る菊池誠(反緊縮)公式 @kikumaco

  文部科学省初等中等教育局教育課程課に電話で問い合わせました。忙しいところをお邪魔して本当に申し訳なかったと思っています。「掛け算の」と言っただけで、「順番ですよね」と返されました。ほんと、申し訳ない。
  結論は簡単です。
  1. 学習指導要領解説には法的拘束力はない      午後0:04 · 2024年4月4日
  2. 解説P.115の「一つ分の大きさである5を先に書く場合5×4と表す」は
    あくまでもこの場合の例示であり、逆順でも構わない。
  3. 同ページに「ここで述べた被乗数と乗数の順序は・・・               

   大切にすべきことである」も 例示であって、逆順でも構わない。ということで 

   す。だから、指導要領解説のレベルでも逆順で構わないのです。

  そもそもP106には ◯◯◯◯◯◯
            ◯◯◯◯◯◯ という図が示されていて、

   ここに「2×6または6×2」と書かれているので、組み分けと式が1対1対応でない  

   ことは明らかなのですよ。

⑤・文科省回答 2023年12月26日 積分定数

 文科省に「今はかけ算の順序の一方だけが正しいと教えているのですか?」と問い合わせ電話したら「いいえ」とのこと。

 

⑥・文科省初等中等教育局教育課程課の回答 

2021年7月27日  東洋経済education × ICT編集チーム  
 「順序がどうというよりも、掛け算がどういうもので、それぞれの数が何を意味しているのかを理解することが大切です。そのうえで、学校現場でどう指導するかは各学校のやり方にもよるでしょうし、児童の状況や理解度を踏まえながらご指導いただく必要があると思っています」

 「『こういう式に当てはめればいい』ということだけを教えると、思考の固定化にもつながりかねませんし、応用問題が解けないことも起こりえます。一方で、『1つ分の数』『いくつ分』といった言葉だけだとイメージしづらいので、具体的な日常生活と掛け算とのつながりを意識しながらご指導いただくことが大事だと思います」※だから何なの?どっちなの?

 

⑦・文部科学省担当官のコメント

「2017年7月13日」

 式が5×4でも、4×5でもまったく問題ない。ただ、問題に登場した数字が何を意味するか理解しないまま、5×4=20と計算するだけで終わりにする指導を避けてほしかった。

 

⑧・文部科学省の回答

「2013年1月25日 朝日新聞

 「国として、『正しい順序』を決めてはいない」と意外な回答。学習指導要領自体にも「順序」の記述はない。ただ、「8×6=48」をバツとする指導については「学校現場に裁量があり、コメントする立場にない」。

 

⑨・文科省初等中等教育局教育課程課

「2012年11月5日  中日新聞

 「掛け算の意味を理解させるよう定めているが、順序については国が定めるものではない」と距離を置く。また、指導要領の解説に対する教科書会社の解釈には「深く考えすぎだと思う」と打ち消している。

 

⑩・文部省の回答

「1972年1月26日 朝日新聞

 指導の段階から見て、4×6だけを正しいとする指導もあるだろうと考えます。担任の先生は授業を通して、こどもを1つの考え方だけに固定しようなどとは考えていないと思います。…ご心配なされる親の学校不信などのことが起こりませんように、学校の先生方とお話し頂ければ幸いと存じます。

 

該当教育主事:指導のあり方よりも、テストも評価の問題だと思う。評価は子どもにとって励み・刺激になるものでなくてはならない。その意味でペケにしたのは問題があるといえよう。

該当教育研究所:子どもが期待通りの答をしなかったからといってペケをするのはどうか。

京都大教授:子どもはアッというような面白いことを考えるものだ。6×4と考えたとしても少しもおかしくない。思考の飛躍、冒険は大切なことで、どんどん生かす指導をやらなくてはいけない。……

 

⑪・文科省の教科書調査官の人と話しから

 あまり長い時間その話題を話したわけではないのですが、「教える側が区別しなければいけない概念を教わる側に強要してしまうことが多い」というようなことを言っていました。○○さんとほぼ同じ意見でしたね。掛け算順序の話についても、「現在はかなり早い段階で交換法則をやる。交換法則の後は、逆順でもOK」でした。

 実際に順序に拘っている記述が多いことについても質問したのですが、直接それに関しては言及せず、「色々な教え方があるのに、何故か一つの方向に向かってしまう。エビデンスに基づいた理論があるわけではないのに、数学教育の偉い先生が主張する方向になってしまう。教育学部の先生はもっとエビデンスに基づいた研究をして発表して欲しい。」と言っていました。

 思い出したので追加ですが、「中学では順序拘りは無い」と言っていました。他のコメントと併せて解釈すると、小学校では順序拘りだが、それは小学校の教え方の「1つ」として認めている。そして、すべての教科書がその教え方を採用しているのは、文部科学省の指導によるものではないとのことでした。※それなら、他の教え方の教科書があってもよいということになる。

⑫・神奈川県教育委員会に勤務経験のある校長先生曰く

 「教育委員会もかけ算の順番はどちらが前でも正解であると伝えているそうだが,何故か広がっていかない小学校文化がある」と。我が勤務校では、県教育委員会のご協力のもと、かけ算・たし算ともに順序不同となりました。意外にすんなりと受け入れてもらいました。

 また、各学校においては,教科書を中心に,教員の創意工夫により適切な教材を活用しながらとあるので、文科省は学校への口出しはできないのだよと教えて頂きました。

 

⑬・三島市教育委員会学校教育課指導係長

 三島市内の小学校においては、かけ算の順序はどちらでも正解とする。公表しても構わない。静岡は、三島だけでなく全県学図なんですね。

 

⑭・京都府総合教育センター 

研修支援部 2013年9月27日

 私の娘は,学校のテストで掛け算の順序や足し算の順序が違うと×や△をつけられて帰って来た事が数回あります。いずれも私が観る限り計算の式も答えも何ら問題の無いものでした。一度は,先生に「どういうことなのか」説明を求めたところ,学校で協議された上で,謝りに来られ,改めるという約束を頂きました。(先生ご自身も疑問に思っていたようで,対応は非常に丁寧なものでした。)

 ネット上でも各所で話題になっています。昨年今年と朝日新聞中日新聞でもこの問題が取り上げられたようです。文部科学省では,この件に関しては順序を固定する指導はしていないというような公式発表だったと記憶しています。京都府教育委員会として,この資料を未だに掲載している意図は何かあるのでしょうか?いずれにせよ見解を知りたいものです。

京都府教育委員会の回答

 今回ご質問いただきました「他の筋の通った考え方で説明できる計算式を『正しくない』と否定することについて」は、ご指摘いただいたとおり、不適切でした。従いまして、当該単元指導パッケージについては、当センターホームページから削除します。